なぜ、私の娘が摂食障害になったのか?

1. 娘の摂食障害の原因を探る…
摂食障害になる要因としては、遺伝的要因や生まれ持った性格などが挙げられますが、実際のところ、本当の原因はまだ解明されていません。かつては養育環境が原因とされ、特に育児に最も関わる母親の責任とされることがありました。しかし、環境が大きく影響するのは摂食障害だけではありません。本当のところはよくわからない、というのが現状です。
私自身も、娘が摂食障害になるとは夢にも思っていませんでした。発症当初は、母親の私が影響している自覚もありませんでした。何が何だかわからない状態で混乱していました。摂食障害を克服した娘に「なぜ摂食障害になったのか?」と尋ねても、彼女は「モデルの体型に興味はあったけど、原因はよくわからない」と答えました。心理学的には、過去の悪い記憶を無意識に抑圧する「逃避」反応のため、具体的な原因を思い出せないのかもしれません。ただし、彼女は「もう二度とあの辛かった頃には戻りたくない」と言います。
摂食障害になりやすい子どもの傾向があることがわかっています。例えば、手のかからない良い子で育てやすい、自分の本心を他人に伝えることが苦手な子ども、感受性が強く、他人に過剰の気配りをしてしまう子ども、白か黒かの極端な思考を持つなどの特徴があります。これらの傾向は、心理学的には高い感受性や自己表現の困難さが影響していると考えられます。
摂食障害の要因が解明されていないのであれば、摂食障害になった原因や過去を掘り起こすことに固執する必要はありません。むしろ、未来志向で現在の問題に立ち向かい、回復を目指すことが大切です。心理学的には、ポジティブな未来を描くことが回復に寄与するとされています。「なぜ、私の娘が摂食障害になったのか」ではなく、「摂食障害になったことを受け入れ、回復に向けてどう進むべきか」という思考の転換が必要です。
2.ある私の母親で子育てが影響しているとしたら…
母親である私の子育てが、娘にどのような影響を与えたのか、何度も考えることがあります。母親だけが原因ではないと理解しているものの、それでも私の対応が異なっていれば、結果も変わっていたのではないかと悩むことがあります。
例えば、私は自分が褒めて育てられなかったこともあり、娘を褒める機会が少なかったと感じています。また、子どもたちを比較することもありました。特に3番目の娘は、我が家の「期待のお姫様」として、私自身の大きな期待を託して育てていました。娘には私の望む道を進んでほしいと願い、その道を整備し、脱線しそうになるとブレーキをかける役割を果たしていました。
私は運転手として指導権を握り、自分の意見が正しいと信じて疑わず、それを娘に説きました。仕事でもそれなりに活躍していたので、自信満々だったことも影響しています。そのため、娘の気持ちを聞く耳を持たず、反抗しない娘を「自分に納得している」と勝手に解釈していました。振り返れば、娘はまるで私の分身のように感じていました。
娘とともに摂食障害を克服する過程で、「私らしさ」を取り戻した結果、上記のような反省と気づきがありました。心理学的な視点からも、親の行動や期待が子どもに与える影響についての理解が深まりました。実際、私の子育ての価値観が、娘に少なからず影響を与えていたと思います。
ただ、自助グループで他の母親たちの話を聞く中で、私だけが特別ではないことにも気づきました。聞き上手で、期待を押し付けずに育てた母親の子どもでさえ、摂食障害に苦しんでいるケースもあります。また、家族や子どものために自分を犠牲にして頑張り続けた母親が、そのことに苦しんでいることもありました。つまり、母親の影響だけでなく、子どもの性格や気質、家庭環境、友人関係、社会的要因など、さまざまな要素が複雑に絡み合っているのです。
もし、親の影響で子どもがつらさを抱えていると気づいたなら、まずはその気持ちに寄り添い、受け止める努力をすることが大切です。学校や友人関係といった社会的要因が絡んでいる場合には、子どもと一緒に、つらさを軽減するための方法を考えていく必要があります。親子で共に悩む過程は、親子関係を再構築するための重要なステップでもあります。
子どもが直面する問題は、時に果てしないトンネルのように感じられるかもしれません。それでも、焦らずに、子どもの気持ちに真摯に耳を傾けることが大切だと学びました。困難は親子の絆を深めるために存在しているのだと信じています。そして、「一人でつらかったね」という一言が、信頼し合える親子関係への扉を開く合図になるのだと思います。